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自転車かいぼー学

「自転車の骨格」 フレームの話

 フレームってすごい!あんなにきゃしゃに見えて乗る人の体重を支えて走ってしまうなんて、どこにそんな強靭な秘密があるのだろうか?自転車が倒れずに走る秘密はどうやらこのフレームにあるのではないだろうか?考えれば考えるほど不思議なフレームの話。今回はフレームについて解剖してみようと思う。

そもそもフレームって何だろう?
 イッキに答えてしまえば「車輪や、クランク、ハンドルなどなどいろいろな部品をマウントする骨格で、自転車として人を乗せるためにつながれたもの。」なのだが、要は骨組み。世の中にはいろいろな形(デザイン)のフレームの自転車がある。たとえばお買い物自転車とスポーツバイク(ロードレーサーやマウンテンバイク)のフレームの差って何なんだろう?
(1)仕事が違う
 決定的な差は「与えられた仕事」が違うのだ。お買い物自転車のお仕事は1:不特定多数の人が、2:お買い物をする、3:しかもある程度乱暴な歩道の段差をがんがん行くような乗り方にも耐え、4:よっぽど長期間放置しない限り動く…実に我慢強いのだ。かたやスポーツバイクはと言うと1:スポーツを志す人が、2:競技としてあるいは健康維持の運動のために、3:少なくともあのタイヤで歩道の段差をがんがん越えようとは思わないだろう(そう言う人もいるようだが…)、4:放置はしないであろう。要するに走るための入力は容赦無くがんがんしても、基本的には大事にされている。と言えるであろう。つまり「丈夫さ」に対する基準がまったく異なるのだ。お買い物自転車の不特定多数が乗る場合と、「志す人」はぜーんぜん違うのだ!つまりお買い物車はデリケートな部分を意識させないようにしているのに対して、スポーツバイク、特にロードレーサーなんかははデリケートな部分を理解しないと壊しちゃうゾー。それゆえ「高価=壊れない」と言う理論は成り立たない。
(2)形の秘密
 お買い物自転車は乗り降りがしやすいように低い位置に1本ないし2本のパイプがレイアウトされている。それに対してスポーツバイクは三角形に近い台形をしている。これは先の「仕事が違う」問題と直結してるわけだが、なんでスポーツバイクはあえて乗り降りしにくいスタイルなんだろう?それは最も丈夫なカタチだからだ。ってことは乗り降りしやすいようにトップを下げたスタイルのお買い物車は「そのカタチゆえ、丈夫なパイプを使う」わけで、結果として重いフレームになってしまうのだ。
(3)パイプの中の秘密
 これは外観ではまったくわからない話で、フレームに携わっている人しかわからない!まあ一部カタログには書いてあったりするけど、読み飛ばしていると思うから伝授しよう。最も丈夫なカタチのスポーツバイクをさらに軽くするための工夫がパイプの中にあるのだ。そもそもフレームでいちばん強度が必要な部分(パイプがいちばん仕事をしているところ)はパイプの交点。逆説的にいえばほかの部分は同じ分布の仕事はしていない、すなわち同じ強度は要らない。パイプは同じ材料なら厚いほど丈夫で重く、薄いほど弱く?軽くなるわけだから、バランス良く厚みをコントロールすると、何もしない均一の厚みのパイプより強度を落とさずに軽く出来るのだ。これを形にすると「バテット管」形になる。

各部の名称から解説
さらに軽く丈夫にするには、パイプの材料そのものを変しかない!そこで次は「素材」のおべんきょーなのだ。
 値段のことはあっちにほうっておいて、カタログを眺めたとする。クロモリだぁ、アルミだぁ、チタンだぁ、カーボンだぁ書いてある。要は「フレームは何で出来ているのか?」と言うことなんだけど、そんなに素材の差ってあるのかな?一般論としては素材にはいろいろな特性がある。・比重(重さと体積の比)・強さ(単位重量あたりの強度)・腐食性・耐久性・加工しやすさ・コスト…なんかが挙げられる。まあウンチクを言えばきりがないんだけど、やはり炭素鋼、ハイテンションスチール(Hi-ten)、クロムモリブデン(Cr-Mo)鋼、マンガンモリブデン(Mn-Mo)鋼などを材料とした鉄系フレームが基本となる。そもそも鉄と人間の付き合いは長いから信頼性はダントツ。加工方法も千差万別あらゆる方法が確立している。それゆえ使用目的に応じた作り分けが容易である。天敵は「さび」。いくら塗装で保護しても長い間には必ずキズがつく。キズをそのままにしたら必ずサビてくる。
非鉄金属系…アルミとチタン
 なんと言っても「鉄」のフレームより軽くできる!自転車全体で1キロ違ったらどれぐらいパワーロスにつながるのかと言ってもピンとこない話だが、長い距離を走ったりするとやはり「軽いほうが楽だ」なんて1グラムでも軽い自転車をほしがるのだ。
 アルミ、チタンともに鉄よりはるかに比重が軽く、「軽さ」を追求するには欠かすことの出来ない素材だ。アルミは比重は軽いが、フレームに必要な粘りや反発力が少し劣る。チョット難しい表現だけど。要するに、「軽さ」に乗る感じなのだ。材料の値段としては高くないほうだから「アルミフレーム!」と謳った価格のこなれたマウンテンバイクもある。ただしこテのは言うほど軽くないので「傷がついてもさびないアルミフレーム!」ってかんじなのだ。高価格帯のアルミはそれ相当の鍛え上げられた素材を使うためさすがに軽い。この軽さは結構フットワークが良いのだ。
 チタンは材料としても高価だし加工方法もつなぎ合わせる技術もかなり高度であることが最大のネック。これらの要素がもろにコストに跳ね返るため、用途は限られてしまう。特性はアルミと同レベルに軽く、鉄より強い。腐食にはぶっちぎりに強い。軽くて強い特性からもっと普及すると個人的には考えていたが、やはり造るのが難しい素材なのかナー?なんかもっと適材適種があるような気がするんだけど…(個人的な意見です)
非金属…ケブラーやカーボン
 チョット前なら金属系フレームと同じようにパイプ状に加工されたカーボン(またはケブラー)を接着してフレーム形状にしていたが近年においては、外観状はヌメッとした張子構造の「モノコック」が主流。元をたどれば布状だからデザインの自由度は高いし、強度が必要なところにぺたぺたクロスを張り込んでいけばいいわけだから一見簡単そうだがそうでもない。工程としては使用されるであろう条件のシミュレーションによって得られた結果に基づいて極限まで贅肉を殺ぎ落とし、原寸の型にぺたぺた張り込むわ、巨大オーブン(?)で焼くわ、こりゃー「張子」と言うには申し訳無いくらいてーへんだーぁ?その分ほかのマテリアルでは得られないぶっ飛び軽いフレームが出来るわけ。だからはなっから使用目的がかなり絞られた設計がされているし、高価だし、誰にでもって言う車種には採用されていないよね。でもかっこいい!モノコックの最大の欠点は修正が効かない。金属フレームは、転倒したとかが原因でフレームにひずみがきた場合、程度にもよるが修正が可能なときがある。またフレームの一部にコッツン凹みを付けてしまっても致命傷になることはよほどのときだ。これに対して、モノコックフレームはへこみやひずみなど元のつじつまが変わってしまったら、強度的にも特性的にもダメージになってしまう。こりゃー乗り手を選んでしまっているのだ。とほほ…

フレームの設計の話
(1)目的はどこで決まるのか
 ロードレーサーとかマウンテンバイクとか巷では言っているけど、フレームの決定的な差はどこにあるのかな?

・入るタイヤの太さが違う
もりた理論の一つに「自転車選びは目的に合ったタイヤを選ぶこと」という項目があるのだが、ロードレーサーは見るからに細いタイヤを履いているし、フレームとタイヤのクリアランス(すきま)も最小だ。それに比べてマウンテンバイクは太いタイヤにゆったりとしたクリアランス。もっとも車輪の規格も違うし、それに伴いブレーキの形式も違う。
・ほんジャーマウンテンバイクに細いタイヤを入れればロードレーサーになるのか?
ロードレーサーにぶっといタイヤは入らないのはわかる!ならばマウンテンバイクに極細のタイヤを履かせることは出来る。それでもってドロップハンドルに改造すればロードレーサーになるのか?確かにオンロードをぶっといタイヤでゴリゴリ走るよりは、軽快に走ることは出来るが、ロードレーサーの走りとは何かが違う。いったい何がそうさせるのか…まずは下記フレームの性格を参照されたし。

(2)フレームの性格?ほんとに微妙な設計のお話
 自転車のフレームにおける性格の基本は、「バランス良くまっすぐに走る」ことであり、これはいわば大義名分のようなものである。これにはただ走るだけでなく、踏み込みやブレーキングに対しての反応の善し悪しや常用とされる速度域における特性なども含まれる。この基本性能に加え、曲がるときの特性、すなわち自分の目的とするフィールドにおいての適応とか乗り手との操作技術的なマッチングをうんぬんすることが、その自転車における性格の表現なのである。ってことはさっきの例で言うと、ロードレーサーのフレームとマウンテンバイクのフレームでは設計段階で設定されている「性格」が違うのである。この性格付けはどの段階で行われるのかと言うと、フレームの各部の寸法と、素材の組み合わせなのである。フレームの寸法って乗る人の体型に合わせた大きさ(サイズ)だけじゃないんだゾー。それを説明するなら、自転車を「四ツ脚動物」にたとえることが出来る。馬が疾走するところを想像してほしい。前足で方向を決め、後ろ足で強い推進力を得るイメージが想像できるかな。これだよこれ!骨格の微妙なバランスの違いによって馬には馬の得意技があるし、ヒョウにはヒョウの、イノシシにはイノシシの得意技があるわけだ。この骨格のバランスの違いを自転車に当てはめるなら、「フレームの寸法(フレームデータ)」ということになる。ちなみに専門的にはフレームデータではなくフレームスケルトン(または単にスケルトン)と呼んでいる。

[体型を合わせるためのスケルトン] フレームサイズ・(シートアングル)・トップチューブリーチ
 通常は「身長(足の長さ)に対してフレームサイズはどれくらい?」という尺度で語られることが多いフレームサイズ。でも考えてみよう。これだけのことならサドルの高さ+フレームサイズ+クランクの長さ、つまりシートポストの上下でアジャストできる。ところが上半身の空間を確保するトップチューブの長さは、ハンドルやステムの交換が必要な場合がある。ってことは本当にチェックしなければならないのはトップチューブリーチと付属するステム突き出しなのだ。
[性格を決定するスケルトン]
ヘッドアングル・オフセット・シートアングル・ボトムブラケットハイト・リアセンター・(フロントセンター)・ホイールベース
 たとえば、ロードモデルにおける細かな違いをあげてみよう。エキスパートモデルと最近はやりのフロントトリプルを採用したモデルの違いについて解剖してみよう。一番の違いはリアセンター。前者が410ミリ以下を採用している場合が多いのに対して後者は410ミリ以上を採用している場合が多い。これはフロントトリプル化に伴うチェーンラインの変化に対応した結果でもあるが、実際には使用目的の微妙な違いによることが大きい。つまりエキスパートモデルに求められる俊敏なダッシュレスポンスや、集団走行時におけるハンドリングを優先させた設計であるのに対して、トリプルモデルの位置付けは「ツーリング」寄りつまりファンライドに趣をおいた結果であると言える。これらの性格の違いはさらにヘッドアングルとオフセットにも微妙に現れている。仮にヘッドアングルが同じならエキスパートモデルのオフセットが40ミリ〜45ミリに対して、トリプルモデルは45ミリから50ミリの間であることが多い。またヘットアングルに差がある場合エキスパートモデルは最大74度近くを採用するのに対して、トリプルモデルは最大でも73.5度ぐらいであることが多い。

 こうやって数値を並べると本当に微妙な差でしかないのだが、細かな特性は相当変わってくるのだ。それほどデリケートなフレーム設計なのだ。

ってことでさっきの命題の答えはというと…「マウンテンバイクに細いタイヤの組み合わせ」は車輪径の割にホイールベースが長くハンドリングは平坦路ではロードレーサーに比べるとかなり緩やかな特性を示す。また踏み込みに対してもリアセンターの長さゆえやはり緩やかに反応する。ただし車輪径がひとまわり小さいことと、ボトムブラケットハイトが高いことで振り出し(上半身で自転車をふる)は軽いので緩やかに反応していることが意識しにくい。と言う結果となる。ただし舗装路の下りではこの特性がプラスになることがある。さー悩んでくれたまえ!フレームスケルトンは奥が深いゾー。

補足:ヘットアングルはエキスパートモデルのフレームもトリプル仕様のフレームも小さいフレームサイズ(大体510ミリ以下)になると72.5度付近を採用することが多い。これは足のつま先と前輪があたらないようにフロントセンター長を確保するためなのだ。この場合、エキスパートモデルに関しては若干ハンドリングが犠牲になっているのはやはりフレーム設計の難しさ、安全確保と性能のぎりぎりの選択なのだ。


そもそもなんでフレームは「斜め」なのか?
 最初自転車は地面から垂直にハンドル〜前輪の回転軸だった。つまり[自転車の方向を変える]=[車輪の向きを変える]と考えられていたのだ。ところが当時の「道」は相当デコボコだったわけで、この垂直関係だとチョットしたつまずきによって自転車が前方宙返りをしてしまう。その安全策としてハンドル前輪系の重心位置をずらすため傾斜をつけたわけだ。これがキャスターアングルの起源である。(ちなみにキャスターアングルは接地面に対するステアリング回転軸の角度のことをさし、単体フレームではこれとは別に「ヘッドアングル」と呼ぶ。)ところが、このキャスターアングルを付けたことによって、今度は「ハンドルが恐ろしく重く」なってしまったのだ。つまり少しでも自転車が倒れそうになるとハンドルはさらに「重く」まっすぐになろうとするのだ。これじゃー今まで乗れていたのに乗るのまで難しくなった。さーどうしよう?そこでいろいろ悩んだ末、「オフセット」なるものに解を求めたのだ!理屈が先か、経験則が先かはわからないが、要はハンドルを軽くしようとした結果であることは間違い無い。これは車輪軸の垂線と地面との交点(接地点)とハンドルの回転軸の延長と地面の交点]との距離つまり現代では「トレール」と呼ばれる値を変化させたわけだ。なんて昔の人は頭がいいんだろう。さらに副作用として「自転車が倒れそうになるほうへ少しハンドルが切れる」ようになったのだ。これが現代では「プレセッション効果」と呼んでいる自転車が2輪で走れる原理そのものなのだ。つまり倒れそうになるとほんの少しだけ起き上がろうとする方向にハンドルが向くというナントも都合の良い作用なのだ。こりゃーイッキに乗りやすい自転車に進歩したのだ。ってことは自転車が倒れない原理は「ジャイロ効果」ではないのだ。もしジャイロ効果で自転車が倒れないのなら誰も乗っていなくても「車輪さえ回っていれば自転車は倒れない」ってナントも薄気味悪いコトになってしまうぞ。

 さてー「ハンドル周辺の斜め」はわかったとして、シートのほうの斜めはどうしてだろう?大地を蹴って進む時代にまったく考える必要は無かった。前輪に直接ペダルがついていた時代には必然的にそうなっていた。うーむ…こりゃーチェーン駆動と関係がありそうだ。チェーンの駆動の発明については別の機会に譲るとして、こりゃー経験則の賜物としか考えられない。ようは「どうしたらいちばん乗り(こぎ)よいか?」極端な例でいうと最近少なくなってしまったが荷物運搬車などは相当斜めだし、それに比べるとロードレーサーなどは少ししか斜めじゃない。これは常用する回転数と関係がありなのだ。運搬車などはがむしゃらにペダルを踏んだところでたかが知れている。ならばゆったり乗ったほうが疲れない。ロードレーサーならがむしゃらに扱がないと勝てない。トラックレーサーならなおのこと。つまりはこの差、要は人体と相談の結果そうなった?!

超しなやか関節「サスペンション」の話
 マウンテンバイクの世界ではサスペンションはここ数年装着率は高まるばかりだ。サスペンションをクッションだと思っている人も多い。実際ダート走行ではライダーへの振動による負担は相当軽くなる。これはサスペンションにおけるクッション的役割なのだ。それともう一つの目的は、車輪をよーく地面につけることなのだ。車輪がよーく地面に接地するとその効果は「良く走り、良く止まる」なのだ。
(1)フロントサスペンションの役割
 視点がぶるぶる震えてしまうのを軽減できる。だからと言ってひじを突っ張っててもいいというものではない。またフロントブレーキングの強度に比例してサスペンションがダイブ(圧縮)して車輪がロックする限界を高めている。フロントサスの応用テクニックとして、前輪がギャップの直前で軽くフロントブレーキを当て、ギャップを越えたら、スパッとブレーキ抜く。これはギャップの完全グリップ走行のワザ。Fサスの挙動はひじで感じ取るべし。
(2)リアサスペンションの役割
 フロントサスよりちょっと使いこなしは難しいぞ。どっかりサドルにお尻を据えてしまう人は「クッション効果」しか感じないと思う。街乗りでふわふわ効果を楽しんでいる分にはこれでも一向に構わないが、ダート走行ではサスペンションが圧縮した後伸張するときに弾き飛ばされるような感じになるのだ。これはひざで吸収するしかない。つまりサドルにどっかり座っていては効果は半分と言ったところ。もっとも街乗り同様重力に任せてダウンヒルする分にはほんとにラクちんで贅沢な装備ではある。これもまた楽しいか?!Rサスの挙動はひざで感じ取るべし。
(3)サスペンションが無いと…
 ダート走行では、やっぱりライダーへの負担増なのだ!ミイラ取りがミイラになったような話だけど…とは言っても欠点が無いわけではない。アップヒルのような状況でもタイヤと路面のロスは最小限にとどめることは出来るが、踏み込むたびに大きくダイブさせていては踏んだ力のロスが大きくなる。その点に注意なのだ。

Copyright : Junichi Morita とプロジェクトK(イラスト:五十嵐 晃)


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