まずはギアまわりに使われる専門用語の基礎知識
ここでギア関係の専門用語です。まずはじめにギア関係(動力の伝達系)を総称して「トランスミッション」といいます。また変速機のことは「ディレーラー」と呼びます。「チェンジャー」と呼ぶ事もありますがディレーラーの方が一般的でしょう。変速そのものの動作を「シフト(シフティング)」または「チェンジ」といいます。そしてギア関係ですが前のギアは3枚で構成されるものをトリプルと言います。外側(大きい方)からアウター(ギア)、センター(ギア)、インナー(ギア)と呼びます。2枚で構成されるものはダブルと呼び外側(大きい方)からアウター(ギア)、インナー(ギア)と言います。後ろのギアはすべてを差してフリー(ホィール)とかカセット(ギア)あるいはスプロケット(略してスプロケ)などといいますがこれは構造の違いにより呼び方が変わります。わからないときは「後ろのギア」でも十分に通用します。小さい方からトップ、セカンド、サード…ローと呼んだり、1段目、2段目、3段目…とかいろいろな言い方が有ります。元々は小さい方から数えていたのですが、最近になってレバー側にインジケーター表示がされるようになって大きい方(軽く踏める方)から1,2,3,4…とナンバリングするようになりました。これは自動車がLowギア(軽いギア比)の方から1,2,3,4,5…と表示されているのに習っていると考えられます。しかし考えてみれば後ろギアの個々を指す場合どちらから何段目かをはっきり伝えればいいだけのことなので、あまり考えすぎないようにしましょう。いずれにしても小さい方をトップ、大きい方をローと呼ぶことだけは変わりません。そして歯数の単位としてティースの頭文字からとった「T」または漢字の「丁(ちょう)」(これは形から当て字にしたものです)を使用しています。つまりあのギザギザの数が13あったら単純に13Tと表示します。だた口頭の場合いちいち単位をつけなくてもそれが歯数を差しているということはわかりますのであまり気にしなくても結構です。活字の場合は大抵「T」と表記されています。
わからないうちは省略変速法なのだ
変速を難解にしている第一の原因はアタマでフロントとリアをどう組み合わせるのか考えてしまう事。それってそもそも変速したらどれくらいの軽さになるのかわからないことに本当の原因があるのだ。とにかく頭が混乱するくらいならだまされたつもりでフロントをセンターに入れっぱなしにしてリアの変速に専念してみよう。そうする事でリアのスプロケットの刻み(隣り合ったギア比の差)を体に覚えさせる。これは数値化するより「慣れ」の問題なのだ。リアの変速だけでもかなりの状況に対応できることが体感出来るはずだ。もし平地でセンタートップで軽すぎると感じてもがまん我慢!特に「乗りなれていない人」ほどちゃんとペダルを回していない人が多いのだ。体力を効率よく温存したければ軽負荷でくるくる回転力で走るコトも大事なのだ。これは登坂でも同じ、くるくる回した方が前へ進むのだ。という事はこの段階は軽めのギアを一発でキメルためのトレーニングなのだ!
慣れてきたところで…ギア比を計算してみよう
ギア比(ギアレシオともいう)とは「ペダル1回転に対する後輪の回転数」のことで、[前の歯の数]÷[後ろの歯の数]で計算する。ギア比に車輪の周長を掛けて「ペダル1回転で進む距離」を求める場合も有るが、ここでは車種によっての違いを比較するわけではないので省略!と平均的なマウンテンバイクのギア比を一覧にしておく。ちなみに数値がデカイほうが速く(重く感じる方)、小さい方が軽い。
F↓R→
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11
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12
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14
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16
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18
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21
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24
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28
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42
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3.82
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3.50
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3.00
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2.62
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2.33
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2.00
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1.75
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1.50
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32
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2.91
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2.67
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2.29
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2.00
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1.78
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1.52
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1.33
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1.14
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22
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2.00
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1.83
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1.57
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1.38
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1.22
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1.05
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0.92
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0.79
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(SHIMANO STX-RCクラス リア8S参考/他の組み合わせでも大体こんな数値になる)
よーく見るとギア比が重複している事に気づくはずだ。たとえるならピアノは一つの鍵盤に一つの音が割り当てられて半音刻みで並んでいるが、ギターは弦が違っていても同じ高さの音が存在する事に似ている。つまり変速機はピアノのように順序よくギア比が並んでいるのではなくて、いわば「3弦ギター」のような並びになっているのだ。という事は弦がフロントギアでフィレットがリアスプロケットというわけだ。このダブりがますます難解にしているわけで、やみくもに変速しても解らなくなるだけなのだ!
色分けした部分は「センターリングを中心に考えたダブりのない組み合わせ」の一例にである。つまりどの状況でフロントを変速するかは、状況によって異なるし、人によっても若干違う。だから「省略変速法」が初めのうちは有効なのだ。
補足
前後の組み合わせを表記するのにたとえば前42Tの後ろ11T場合なぜか42T×11Tと表記する。計算上は÷なのに?!?発音は「よんにーいちいち」っていうのが一般的。英語なら×は「バイ」と発音。
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実践!さーもう一度フィールドに出てみよう!
今度はアウターで走りだそう。するとリアは14〜16Tぐらいで走っていると思う。そこから坂になるとたいていはそのままリアを21とか24Tぐらいに変速していると思う。家のご近所ならこんな変速でも十分である。とことがサイクリング中に42T×28Tでも対応できない坂に遭遇したときが解らなくなるのが今までのきみたちなのだ!と言う事はリアが21Tぐらいを使用しているときでまだ坂が続くのではと予測できるときあらかじめ32T×16Tに変速しておくのが「正解」なのだ!またドーンと坂を目の前にしたときフロントを「ポン」と変速すればそれはリアで言えばほぼ2段かえたのと同じなのだ!この変速方法も「正解!」ここまで理解できればもうマスターしたのも同然。あとは自分独自のフロントシフトのポイントを見つければいいわけだ。つまり…
うまくいかないで組み合わせを悩むより
うまくいく組み合わせを得意なギアレシオにしまおう!
これしかない!
変速の絶妙なタイミング
位置決め機構(インデックスシステム)のおかげで普段はそれほど意識しなくても、すぱすぱ変わってしまう今時の変速機。ところが登り坂なんかで「ガチャガチャいうだけでなかなか変わらない!」体験をした人は多いと思う。たいていは「変速機が壊れたかな?」とか機械の方を疑ってしまうが本当にそれだけだろうか?実はインデックスであろうとなかろうと変速をより効率的に変速させるタイミングがあるのだ。
変速しにくい状況を解説
もし「脚の回転をカウントして下さい?」と聞かれたらペダルがどこの位置の時にカウントするだろうか?たいていは脚に力が入り始めたポイント、角度的には1時から2時のあたりを通過したときに「1,2,3...」とカウントすると思う。次に「ここだ!と思うところで変速してみて下さい?」と聞かれたらどこで変速するだろう。やはり「ここだ!」と思う点と「カウント」するポイントが一致すると思う。つまり一番力が入るとき「あー、きつい…」と思って変速しているわけだ。
気分をかえてトランスミッションを横から眺めてほしい。ペダルに入力された力はクランク→チェーンを経て後輪に伝わる。そこでチェーンに注目してほしい。つまり力を伝えるときチェーンは上半分が「仕事」をしているだけで下半分は「さぼっている」わけだ。だから力が目一杯入っている時はチェーンはピンピンでフロント変速機の羽根(プレート)がいくらチェーンを押しても変速しない事が有る。リアの変速機は「さぼっている」下側のチェーンを架け替えようとするから変速しようとする。ところが変速が終了するまで、チェーンは2枚の歯の間で中ぶらりんみたいになっている。この状態で「力」かければやはりパキパキ言うだけでなかなかチェンジが終了しない事になるのだ。
どのタイミングでチェンジすればいいのか?
つまり「力」がかかっていない「から回し」の時が一番良く変速する。「走っているときはそんなコト出来ない…」そう思うなかれ。1時から2時ぐらいが力が入り始めるポイントなら大体4時ぐらいまでは「力」がかかっているわけだ。そして反対側のクランク力が入る点はその対角、7時から10時ぐらいまで力がかかっているわけだ。ということはそれ意外の12時附近と6時附近は「それ程力がかかっていない」コトになる。ここを通過するときの脚(膝及び脚の付け根)の角度は一番開いているか、一番閉じている時である。ということは力はほとんど「出ていない」わけだ!ここを「死点」という。ここが変速のポイントなのだ!つまり先に書いた通り「ここだ!」と思う点は力が入っているから変速しにくい、ということで「死点」を通過するときに「ポン」とやればいいのだ。このときのタイミングの取り方は「いづれかの腿が体に一番近付いたとき」と覚えればGoo!
実はこのタイミングで機能する「仕掛けが」ある!
今一度トランスミッションを見てほしい。アウターリングに注目して見ると、ちょうど上死点と下死点に位置する歯の高さが他とくらべると低くなっているとおもう。これが実は変速をよりスムーズにする仕掛けなのだ。歯が欠けているわけではないので慌てないように。実は自転車屋さんをやっているとたまーに「ギアが欠けちゃったんですけど…」って心配顔で修理を依頼する人が来るのだ!ほんとに欠けている事も有るけどほとんどはこの仕掛けに気付かない人なのだ…めでたし、メデタシ!!
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