サイクリングに限らずスポーツ全般にいえることだが、「ケガはつき物」。もちろん無いにこしたことはないし、そのためには「イチにも2にも安全への配慮」すなわち交通道徳上の安全への配慮や、ヘルメット・グローブなどの個人装備によるプロテクションであることは言うまでもありません。しかし、それでも「ケガ」をしてしまったら…もしものために慌てずに済むよう「サイクリングにおけるファーストエイドについて」考えてみたいと思います。
なお、本章では第一次救命「心配蘇生」については一切ふれておりません。あらかじめご了承の程。。。 |
※ファーストエイドキットについては文中最後部へ一覧---->[Jump] |
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ファーストエイドのスキル |
救急救命講習であれば普通・上級とわず、時間と講習料さえあれば「スキル」として身につけることはできます。もし講習の機会があればどんどん受けるべきだと思うし、筆者も「上級救命講習」は定期的に更新しています。その根底にある社会の一員として行動理念は学ぶべきことは大変数多くあります。しかし、この講習が「即」サイクリングや他のスポーツに役立つかどうかは、以下を参考に皆さんが各々できることを一つでも頭に置いてもらえれば…と、考えております。
というのも、ファイーストエイドの第一歩は「連携にあり」だからです。
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@先ずすべき最優先行動 |
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サイクリング中にトラブル発生!これはケガ、自転車のトラブル問わず「安全な場所に移動する」「対処する空間を確保する」の2つです。事故の場合、現場の保存は考えなくて結構です。後続の車両等による二次的なトラブルにならないよう。トラブルの大小にかかわらず、自転車と人の両方を安全な場所まで移動させます。 |
A怪我した人(以下:傷病者)が移動不可能?! |
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これはどういう判断に基づき移動不可能なのでしょう?
(1) 打ち所が悪かった?
(2) 意識が無い?
(3) 大量の出血?
(4) 対処する人(以下:バイスタンダー)がひとりでは力量的に移動不可能?
(3),(4)を除き、移動させるケースと考えられています。バイスタンダーが複数いた場合は、誰かひとりをリーダーとして衣服等をつかめば移動可能です。このときリーダー格の人は「せーの」と声をかけ、全員の力が同時に出るよう号令を出します。
(3)の場合、先ずは直接圧迫による止血を行います。そのあと、どう処置を継続するか考えればよいのです。また、別の人は救急車の手配や、他の人の助けを借りるなどいち早く外部との連携リンクを確保します。
(4)の場合、とにかく他の人の助けを借りるしかないでしょう。しかし(3)が認められた場合直接圧迫による止血を優先し、声により手助けを外部へ求める行動をします。 |
B山中で連絡手段が無い! |
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携帯が圏外、公衆電話も無い、民家も無い!いずれの時、その場を離れて外部との連携リンクを確保しなくてはなりません。複数名いる場合は、瞬時に傷病者に付くひとと、その場を離れる人と役割分担をすればよいでしょう。人員的に余裕がある場合、その場を離れる人は2名が望ましく、お互い慌てないように確認しあうことが大事です。また人員的に余裕が無く傷病者から離れる場合は
(1)傷病者に十分な安全が確保されている
(2)人通り車の往来が全く無い
のいずれかの時に限られますが、傷病者が身体的に危険な場合はこの限りではありません。
尚、その場を離れるということは「先に進む」か「戻るか」二者択一の判断となりますので、コースの進行状況や自分のいる場所を常に把握することも大事です。 |
【補足】周囲に注意を促す |
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LEDライト等の点滅機能を有効活用し、トラブル等で停止する際には点滅させましょう。
(副読項目--->[Go!]別ウィンドウでひらく) |
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以上は「相当ハデにやってしまった状況」を想定していますが、どんな些細なトラブルであれ、瞬時に判断できるようアタマのすみにタタキこんでおいてください。ココまでの基本的な手順は
step1: 安全な場所に移動する
step2: 対処する空間を確保する
step3: 連絡(連携)
step4: 処置継続 以上4点です |
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次にサイクリング中において予想される範囲で、傷病者への具体的な処置について書いておきます。尚、ファーストエイドは治療が目的ではないので、薬を「塗る」「投与する」」等の行為は傷病者に対してバイスタンダーが行うべきではありません。傷病者本人が薬に対するアレルギーを把握した上で、傷病者自身がで判断し応急処置として薬を使用しましょう。また、薬などを使用し、引き続き医療機関へ行った場合はその旨と伝えるコト。 |
C擦過傷(すりきず)・切り傷 |
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出血がひどい場合は直接止血をし、即医療機関へ。軽度の場合は傷口付近のドロや砂を洗い流し、消毒する。傷口の保護が必要な場合は滅菌ガーゼのみを使用し、テープや包帯で固定する。 |
D打撲 |
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切り傷等が伴う場合は、そちらの処置を優先する。腫れがある場合は先ず冷やす。コールドスプレーは、薄い布の上からスプレーする。水で冷やす場合、十分な量の流水の確保が困難な時は、布に水を含ませ冷やす。またビニール袋が手元にあれば(氷は無いが…)インスタント氷のうとして、患部を冷やすことができる。しばらく休んでも動かすことが困難な場合は、三角巾、添え木、テーピングなどを利用し患部を固定し、医療機関へ。自転車用ポンプや工具類も添え木の代用品として利用できる。 |
E骨折 |
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打撲と骨折の判断は外部からではかなり難しい。打撲のみでもめまいなどを伴う場合もあるし、実は骨折していたということも少なくない。基本的に打撲と同じく、冷やすことが第1である。経過とともにめまいや気分が悪いなど変化が認められた場合は、それ以上動かさず救援要請を行い医療機関へ。 |
F虫に刺された! |
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「蚊に刺されたくらいで騒ぐことは無い」…屋外しかも山中なら、少し疑った方が良いだろう。蚊に限らず、蜂等に刺された場合は、先ずその場から移動する。そして、患部をつまむようにして毒成分をつまみ出すようにしながら水で洗浄する。抗ヒスタミン剤を含む副腎皮質ホルモン軟膏があれば塗っておく(モチロン薬アレルギーが無いのが前提)。尚、ヘビにかまれた場合は救援要請を行い、その間に止血帯(三角巾)などで患部より心臓に近いほうを縛り、毒を吸い出す。その後医療機関へ。 |
【補足】水による洗浄 |
いくらきれいだから…といって川の水、海水などでは洗浄しない。傷口の洗浄目的であれば水道水あるいは水筒の水に限られます。 |
G熱中症・熱射病・日射病・脱水症状 |
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涼しい場所に移動し、体を締め付けているベルト類ボタン類を緩める。次に、濡れタオルなどで、首、脇、額などを冷やし、全身へは衣類などで仰ぎ風を送り全身の体温を下げる。落ち着いてきたら、冷たい水を摂取させる。 |
Hあしがツった・肉離れ |
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ツった場合は、筋肉を温めることとストレッチ。屋外で温める手段が無い場合、汗をよく拭い、衣服等で保温する。肉離れの場合は、伸縮包帯やサーポーターなどで加圧し、冷やす。 |
Iトゲが刺さった! |
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小さいトゲなら5円玉50円玉など穴の部分を患部に押し当て、毛抜きやピンセットでトゲを取り除く。また針などで取り除く場合は針を消毒すること。このとき携行する針は「安全ピン」だと応用の幅も広く、名実ともに安全に持ち歩くことができる。 |
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傷病者の大事に至らず一連の処置後、無事に走り出すときは念のためというか、念には念を入れて自転車のほうのチェックをお忘れなく!特に、リヤディレーラーは内側に曲がっちゃったりしてないですかぁ〜?? |
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ファーストエイドキット |
以上の処置をするのに必要なファーストエイドキットを列挙しておく。 |
水:水は重いので最小限にとどめておきたいところだが、救急の観点からすれば常に多めの水の携行が必要である。 |
[備品類]
ピンセット・毛抜き・小さなはさみ・安全ピン・油性マジック
滅菌ガーゼ・三角巾・テープ・包帯・医療用ゴム手袋
携帯用ウエットティッシュ(アルコール含む)
※油性マジックは止血帯を使用した際、時間を書き記すため |
[常備薬]
マキロン・洗浄系目薬・抗ヒスタミン剤含む副腎皮質ホルモン剤
ムヒ・熱さまシート・バッファリン・胃薬など
※薬類は使用期限があるため、使用期限リストを作っておく |
[補器類]
ホイッスル・エマージェンシーシート・レサコ(マウスピース)
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以上の物をベースに、個人で必要と思われる物を検討されたし。
なお、グループで行動する場合、三角巾と滅菌ガーゼはいくら有ってもよいので、個人備品として各1加えほしい。 |
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2005.7.26更新New!!
より実践的かも! 〜サイクリングにおける擦過傷の処置〜
『傷口を水で洗浄し被覆材でカバーする』。消毒やガーゼの問題点云々難しい問題は抜きにして、サイクリング中における擦過傷の処置には、こちらの方がより実践的と思われる。以下参考にされたし。
○2005.7.26朝日新聞朝刊掲載
「潤いを保つのが正しい傷のケア」
http://www.asahi.com/health/jhcolumn/030720/
○関連リンク
「新しい創傷治療」
http://www.wound-treatment.jp/
「NPO法人創傷治療センター」
http://www.woundhealing-center.jp/ |
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